八千八谷の作り方 |

梅雨本番です。雨がよく降っています。

奥鐘山に普段は見られない沢が現れます。
黒部峡谷はその豊富な水の流れによって浸食され、深いV字谷となったと考えられます。
この沢もいずれは岩壁を削って谷を作るのでしょうか。

「黒部八千八谷(くろべはっせんやたん)」とは、たくさんの、数えきれないほどの谷が合流して黒部川の流れを作っていますよ。ということのたとえなのですが。
その名の通りトロッコに乗って眺めているだけでも大きな谷から小さな沢までたくさん見かけます。
このたくさんの谷、いったいどうやってできるのでしょう。
黒部川の流域の大半は花崗岩を主体としています。
御影石(みかげいし)という名で石材としてもおなじみの岩石です。
マグマが地下の深いところでゆっくり冷え固まって出来た花崗岩は非常に硬いのですが、マサ化と呼ばれる風化をしやすい性質も持っています。
漢字で書くと真砂(まさ)、とは花崗岩が風化してできた砂状のもののこと。
かたい花崗岩が風化してしまうと、山は削れたり崩れたりしやすくなります。
この風化作用は岩のある場所の違い、水や空気に触れる量、花崗岩に含まれる組成の違いなどによって風化しやすかったりしにくかったりするようです。
また、断層の存在、大町トンネルで有名な破砕帯なども水を通しやすくしたりして地形を変える要因となりそうです。

名剣温泉手前の崖(厳密にいえば花崗岩じゃないかもしれませんが)、よく見ると節理と呼ばれる一定方向にそろったひび割れがたくさん見られます。
この節理によって割れる方向が定まったり、硬いところが残ったり、様々な要因が重なって今の黒部峡谷のダイナミックな地形となりました。→有名なのは 十字峡 や S字峡
そしてその地形は今もなお変化し続けています。

(山が崩壊して流れ下ってくる土砂を防ぐために建設された祖母谷堰堤。)
数百万年前から隆起し続ける大地は地表面で侵食され続けています。
今我々が見ている山はいつも同じようでいて、実は姿を変えているのかもしれません。
前回の記事 とは真逆なことを言っているようですが(^^;)
時間のスケールの違いですね。
鳥の飛び立つまでの時間と山が姿を変えるのに必要な時間。