2019年09月 欅平ビジターセンター STAFF BLOG

欅平ビジターセンター
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欅平ビジターセンター STAFF

欅平ビジターセンター
〒938-0200
富山県黒部市宇奈月町黒部奥山
TEL:0765-62-1155
 
黒部峡谷の景観とそこに生息する動植物の紹介。黒部峡谷の誕生や歴史・地形・地質・景観・動植物・登山ルート、峡谷と人間の関わりをマルチイメージスライドにより紹介しています。

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真木の葉

台風もいくつか過ぎて季節はすっかり秋。
1kiri.jpg
ある日の雨上がりの光景です。
「霧立ちのぼる 秋の夕暮」ですか。

上の句はなんだっけ、と調べました。
「村雨の 露もまた干ぬ 真木の葉に」でした。
百人一首の中にもある寂蓮法師の詠んだ歌です。

この「真木」とは植物のマキ(槇)のことを指す場合もありますが、
多くの場合、広い意味でスギやヒノキ、マツなどの常緑樹の事を指します。

欅平周辺で観察できる常緑針葉樹は

まずは黒部峡谷を代表する ツガ
2tsuga.jpg
北アルプス周辺ではよく似たコメツガのほうが多く見られます。
しかし、ここ黒部峡谷では本来暖地に生育するツガが群落を形成することが大きな特徴となっています。
詳しくは→当館HP「黒部峡谷の地形」にて

3tsuga.jpg
コメツガと見分けるポイントは若い枝に毛がはえていないことと、球果(まつぼっくり)が枝に対して直角ぎみにつくところです。
ちょうど今年は奥鐘橋のたもとにたくさんの球果をつけた大木がありますので観察してみてください。

それから ネズコ
5nezuko.jpg
ヒノキの仲間で、別名はクロベ。
他のヒノキに比べて、材の色の赤みが強いことから黒檜(くろひのき)とも呼ばれます。

6nezuko.jpg
小さなうろこ状のひとつひとつが葉です。
サワラやアスナロに似ていますが、葉の裏面の気孔帯(白っぽい模様)が、サワラなどでは、はっきりした粉白色なのに対し、やや黄緑色ではっきりしないところがポイントです。

そしておなじみの スギ
4sugi.jpg
5sugi.jpg
富山県東部の山地に多く見られるタテヤマスギ(立山杉)と呼ばれる地域品種と思われます。
トロッコの鐘釣駅より下流の沿線では植林されたらしき杉林も見られますが、欅平あたりでは、土壌のたくさん溜まるような平らな場所があまり無いせいか、まとまって生えている場所は見つかりません。猿飛遊歩道の途中、河原園地近くに2本の大木がありますが、自然に生えたものなのでしょうか。ナゾです。

あとは、近くではなかなか見つけられませんがマツもあります。
(たぶん キタゴヨウ)
7kitagoyou.jpg

いずれも古くから建材などに利用され、ヒトの生活にかかせないものでした。
そしてこれからの季節、紅葉が進むと、赤や黄色に色づく落葉樹に混じる濃緑色のアクセントとして、黒部峡谷を彩ります。

まだ今は緑一色の山ですが、実は多種多様な樹木があるということも、ぜひ観察してみてください。

ヤママユ

朝。
欅平駅舎の2階食堂の窓に巨大な蛾を発見。

20190923_1.jpg
ヤママユです。
食堂の窓近くにある非常灯に惹かれて来てしまったのでしょうか。

20190923_2.jpg
こちらは雌。
触覚の形が細い櫛状。

20190923_3.jpg
その名の通りヤママユの蛹は繭になります。うっすらと緑色の繭。
「野蚕」といってカイコの繭から絹糸をとるようにヤママユの繭からも糸をとることができるのだそう。

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こちらは雄。

20190923_5.jpg
触覚が大きな葉脈状。

見た目とかお嫌いな方もいらっしゃるかもしれませんが
成虫の寿命は長くても1週間ほど。
温かい目で見守っていただければ。と。

黒部峡谷自然観察会を行います 【10月28日 月曜日】

欅平ビジターセンター運営協議会では、
10月28日(月曜日)に欅平周辺で自然観察会を開催します。
2019秋の自然観察会申込書

ルートは欅平から祖母谷温泉を予定しています。
先着20名。
申し込み締切りは10月17日ですが、
定員に達した時点で受付を終了いたしますのでお早めに。

お申込み、お問い合わせは→黒部市役所商工観光課内・協議会事務局まで。

猿飛遊歩道について

残念なお知らせです。↓
猿飛遊歩道の一部通行止めについて(今シーズン閉鎖)

猿飛峡を間近に見られる「猿飛峡展望台」に行けないのは本当に残念です。
でも遊歩道の「一部」ですから。
「大部分」は通行できますから。
黒部川の流れを間近に感じながら峡谷の自然を楽しめる遊歩道です。

今、見ごろを迎えているのは
1akinokirin.jpg

2akinokirin.jpg
アキノキリンソウや

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4tennninn.jpg
テンニンソウなど

そして来月にはいよいよ紅葉の季節を迎えます。

「猿飛峡見られないなら行かなくても良いかな。」
なんておっしゃらずに。
通行止めのところまで行くと下流の方に
5ikidomari.jpg
川岸の岩壁がせり出して川幅の狭くなった
「猿飛峡」の入り口部分が見えますから。

(落石や転倒に注意して)散策をお楽しみください。

黒部川本流と支流の水の色が少し違うのが分かりますか?

水の色の違い
海の青色や水深の深い川の青色は、水の伸縮振動に起因する可視光線の吸収に加え、空の色の反射も関連しているそうです。これは空の光の水面における反射や水中に入射した光が微粒子により散乱され、途中で水による吸収を受けた後、空中に脱出した透過光との合成による色が水の青色として出現しているそうです。水面における反射率は入射方向が水平に近づくほど高くなり、より空の色が反映される。夕焼けが反射すれば、海面はオレンジ色に染まるのも同様だそうです。
また、水に含む岩石などの微粒子の色も反映しているようです。
写真の水の色ですが、左下から上に流れているのが黒部川本流で、少し緑色に見えますね。 また、右下から上に流れているのが黒部川の支流で祖母谷川で、少し青く見えますね。
この水の色の違いは、前の記事の写真で分かる通り「立山連峰」と「後ろ立山連峰」の岩石の違い(すべての岩石ではありませんが)で、水に含む岩石の微粒子の色が反映されているようです。

立山連峰(黒部峡谷の左岸側)と後ろ立山連峰(黒部峡谷の右岸側)の岩石が違います。

岩の違い左の写真は黒部川(黒部峡谷)左岸側の岩石で、日本列島が誕生したころの古い花崗岩で、黄土色の系統です。
また、右側の写真は後ろ立山連峰が隆起してできた世界で最も新しい花崗岩(パンダ石と言われている)で、白っぽい色の系統です。
この二つの岩石が黒部川の水の色にに影響を与えているようです。

飛び込みのお客様

欅平ビジターセンターの玄関です。
1entrance.jpg
日本全国、世界各国のお客様がご来館くださいます。
毎日たくさんのヒトのお客様がいらっしゃいますが、
時折ヒト以外のお客様が、うっかりご入館されることも。

2yabukiri.jpg
キリギリス(たぶんヤブキリ)ですね。

3tokage.jpg
ニホントカゲ(ヒガシニホントカゲ)です。
青い尾はまだ幼いしるし。

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小さな蛾(たぶんシロオビクロナミシャク)。

他にも色々。
あまり来ていただきたくないハチやアブなんかも、たまに、入って来ます。
仕方ないです。彼らの生活圏のなかにこの建物があるわけですから。
うっかり入って来てしまわれたヒト以外の方々には、できるかぎり丁重にご退館いただいております。

先日、飛び込んで来られたのは、この方
5oosenchi.jpg
丁重にお見送りを

6oosenchi.jpg
失礼。ひっくり返してしまいました。
おなかの光沢も美しいですね。

7oosenchi.jpg
オオセンチコガネです。
後ろ脚にくっついている白いものは風除室にあった蜘蛛の巣ですね。
ゴメンナサイ。ちゃんと掃除しておきます。

8oosenchi.jpg
良く似たセンチコガネと見分けるポイントは、頭の先、上あごの上についている板の形です。よく見て観察しないと全くわかりません。

名前の「センチ」の由来はトイレの古い呼び方「雪隠(せっちん)」から。
成虫も幼虫も哺乳類の糞や腐った死骸などを食べているのだそうです。
餌となる糞をする野生の哺乳類が生息しているからこそ見られる昆虫です。
黒部奥山の自然の豊かさの証明、というのは、ちょっと言い過ぎですか。

あ。しまった。
素手でさわっちゃってたな。

温泉三昧

欅平周辺では3箇所、温泉を楽しめる場所があります。
欅平駅に近い方から、
温泉1
欅平温泉猿飛山荘(徒歩5分)

温泉2
名剣温泉(徒歩20分)

温泉3
祖母谷温泉(徒歩50分)です。

いずれも源泉は同じ、「祖母谷地獄」です。

ことの発端はまだ春先の事。
ビジターセンターにいらっしゃったお客様からの質問で
「名剣さんのお湯はイオウ臭くなかったのに、どうして猿飛さんのお湯はイオウの匂いが強いのですか」と。

名剣温泉のご主人Hさんに聞いてみました。
名剣温泉では
温泉4
源泉から引いてきた温泉水を溜める槽に、冷水を通したホースを沈めてお湯を落ち着かせながら冷ました後、沈殿物を入れないように上のほうから次の槽に移して、内湯と露天風呂に分配しているのだそうです。
沈殿物としてイオウ臭さの成分が取り残されて、お湯の匂いが軽減したのでしょうか。おそらくそれも要因のひとつでしょう。

空気中を漂うイオウ臭さの正体は硫化水素(H2S)と思われます。温泉水中に溶け込んでいる硫化水素が空気中に飛び出してくると、我々は独特の匂いを感じることになります。その量が多いほど臭く感じるというわけです。
温泉水に含まれている硫化水素やその他の硫黄化合物の量は、源泉を同じくする3箇所ともほぼ同じはずなのですが、硫化水素が温泉水から飛び出してくる量は温度や水素イオン(H)の量(pH)によって変化します。
一般的には水の温度が高いほど、酸性が強い(pHが低い)ほど、空気中に出てくる硫化水素の量は増えるそうです。

と、ここで更に疑問が。
ビジターセンター館長Kの証言、
「祖母谷温泉のお湯は、そんなに匂いが気にならない」そうで。
おかしいですね。源泉に最も近く、温度も高いはずの祖母谷温泉では臭くないなんて。
そして、ビジターセンター職員Hの証言、
「朝、欅平に到着したとき、やたらイオウ臭く感じることがある」とのこと。
朝だけ、というのがポイントです。
もちろん風向きなどの影響も考えられますが、おそらくヒトの嗅覚の特徴が大きく関与していそうです。よく「鼻が慣れる」といいますが、最初は匂いが気になってもだんだん気にならなくなる現象です。
祖母谷では、河原の源泉から絶え間なく立ちのぼる匂いで覆われており、鼻が匂いに慣れてしまった状態でお湯に入るため、あまり感じないのではないかと考えられます。
逆に、欅平駅周辺では、猿飛山荘や足湯の湯気からしか匂ってこないため、鼻がまだ敏感な状態でお湯に入ると、匂いが気になるのでしょう。

温泉5
温泉6
温泉7
河原展望台の足湯、猿飛山荘からお湯を引いています。

というわけで
化学的な要因と、生物学的な要因とで色々考察してみましたが、正直なところ匂いの違いというところの結論は出ませんでした。
まあ、源泉は同じ「弱アルカリ性・硫黄泉」ではありますが、三種三様の楽しみかたが出来ることは間違いありません。
冷たい雨が続いたり、残暑の日があったりと、とかく不順な季節です。
ぜひ欅平の温泉をお試しください。

ご注意:日帰り入浴はお時間が限られます。だいたい午後3時か4時頃で終了されます。利用できる時間帯など不明な点は直接各温泉までお尋ねください。
(黒部・宇奈月温泉観光局HP)

祖母谷地獄(ばばだにじごく)

祖母谷温泉までのルートは→コチラ

祖母谷川にかかる鉄橋を渡った先
地獄1
看板の左には山小屋・祖母谷温泉があります。

温泉の反対側、右を向くと(草刈りが終わっていれば)2本の道が。
地獄2
左の山側の道は白馬岳方面に向かう登山道、
右の河原に降りていく道を進むと
地獄3
河原から湯気の立ちのぼる「祖母谷地獄」です。

地獄4
河原を少し掘った窪みに湧き出た温泉水が溜められ、ホースで各温泉まで送り届けられています。

源泉の温度は100℃近くになる場所もあるので、迂闊にさわらないようご注意ください。
祖母谷(ばばだに)の名前の由来、嫉妬の火の玉と化して谷に落ちた女性の怒りの温度、恐るべし。。。

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