黒部峡谷の植物 欅平ビジターセンター STAFF BLOG

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〒938-0200
富山県黒部市宇奈月町黒部奥山
TEL:0765-62-1155
 
黒部峡谷の景観とそこに生息する動植物の紹介。黒部峡谷の誕生や歴史・地形・地質・景観・動植物・登山ルート、峡谷と人間の関わりをマルチイメージスライドにより紹介しています。

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「蝶」と「舟」

まだまだ暑い日が続いていますが立秋も過ぎてまもなく処暑。
ゆるやかに秋に近づいています。

タテヤマハギ1
秋の七草のひとつ萩の花が見頃です。

万葉集の中で植物を詠んだもののうち萩を詠んだものが最多の141首なのだそうで。
日本人にとって万葉の時代から身近な植物だったのでしょう。
ちなみに2番目に多いのが梅の118首。令和。

一般的に萩の花といえばハギ属Lespedezaの花のことを指します。
日本にはおよそ10から20種ほどが自生しているようで。
よく見られる野生種はヤマハギ、ケハギ、マルバハギなど。
栽培されているものではミヤギノハギが有名です。

タテヤマハギ2
欅平周辺では名剣・祖母谷方面道路でよく見られるのがケハギの仲間。
あえて分類するならタテヤマハギかと。
ちょっとそのあたり(ミヤギノハギとケハギとタテヤマハギあたり)線引きがあいまいなので。。。なんとも。
まあともかく萩の花です。
山の崩れたところなどに真っ先に入ってくる先駆植物(パイオニア)でもあります。
よく陽の当たる 崖っぷち!。好きなんですね。

タテヤマハギ3
ハギを含むマメ科の植物の多くは蝶形花冠という花の形(構造)をしています。
蝶の形だろうか。。。横から見ると蝶が止まっている形に見えなくも。ない。です。
他のマメ科の花には蝶により似た感じのものもありそうです。

タテヤマハギ4
その蝶形花冠。3種類の花弁(花びら)から成り立っています。
写真のハギの花でいうと上に1枚大きく突き出した花弁が旗弁。
一番下の膨らみのあるのが竜骨弁(舟弁)で2枚が合わさり雄蕊や雌蕊を包んでいます。
そして真ん中の横に2枚突き出しているのが翼弁といいます。ケハギの仲間ではこれがちょっと短めなのがポイント。
竜骨は英語ではKeel。船底の曲線部分の構造(部材)を指します。たしかに。これは納得。
そして上に帆を立てているような旗弁を目印に虫たちが蜜を求めてくるのだそう。

蝶の形なのか舟の形なのか。
みなさんは何を連想しますか。

ただいま猿飛遊歩道にも行けませんので。
ちょっとこちらで萩の花の観察とか。
いかがでしょう。

青いクルミ

広場 サワグルミ大木
ビジターセンター前のサワグルミの大木。
このブログでは何度も登場していますのでおなじみなのでは。と勝手に思っています。

ごくたまに「え?クルミ?食べられるの?」と聞かれることがあります。
ひとことでお答えするなら「食べられません」。

サワグルミ果実
夏の間よく見るとふさふさとたくさんの果実をぶら下げています。

サワグルミ落ちた実
まだ青くて熟していないのですが(ちなみに茶色く熟した様子→ 去年の9月
先日の大雨で落ちてしまった果実を見てみましょう。

サワグルミ青い実
翼(よく)と呼ばれる羽根のような形のものが両脇についています。
中央の膨らんだ部分の中にいわゆるクルミが入っています。

サワグルミ去年の実
これはおそらく去年落ちたもの。
硬い殻につつまれているあたりはおなじみのクルミと同じといえますが。
とにかく。小さい。
毒があるかどうかはちょっとわかりませんが殻を割って食べられる部分があるとしても小さすぎますね。

オニグルミ果実 オニグルミ木
こちらが食べられるクルミの一種、オニグルミです。
宇奈月駅からの散策ルート「やまびこ遊歩道」のトンネルの先にオニグルミの大きな木がありました。
直径3、4cmほどの丸い果実をたわわに実らせていますがこちらもまだ青くて食べられません。
秋になって熟して周りの柔らかい果肉をはがすとおなじみのクルミの実が現れます。

サワグルミもオニグルミも川の近くに多く分布します。
特にサワグルミは沢沿いで大きな群落を作ることもあります。
熟して落ちた果実が長時間水に浸かったとしても中の種子はクルミ特有の硬い殻に覆われているので腐らずに発芽に適したところにつくまで守られるのでしょう。

やまびこ遊歩道入口
宇奈月駅横の「やまびこ遊歩道」の看板の後ろにもオニグルミの木がありますのでお時間があれば(まだ青い)クルミの実探してみてください。

ちなみにこの看板の後ろの草むらでここ数日キリギリスが大合唱しています。
なかなか姿は見えませんが。
ぜひご鑑賞ください。
「ぎいいいいい…っちょん。」

「密です。」

密集密接です。
ギンリョウソウ1
初夏のブナ・ミズナラ林、林床の主役 ギンリョウソウ です。
もともと何本かまとまって生えることが多いのですが、
これはちょっとかたまりすぎ。

猿飛遊歩道の途中、河原園地横のこの場所は毎年ギンリョウソウの観察スポットです。
今日はまだ開花する前のつぼみの状態。
完全に花が咲くと↓こんな感じです。※去年の写真
ギンリョウソウ2

葉緑素を持たないので真っ白な独特のビジュアルをしています。
自分で光合成をせず、地下に菌根と呼ばれる菌類(キノコの仲間)に共生(寄生?)した部分を形成して栄養を獲得します。
この菌類はさらにミズナラなどの根と共生しているので、周りを見渡すとこのギンリョウソウの近くにもブナやミズナラの大木が見つかります。
ギンリョウソウ3

見えないけれど地面の下ではいろいろ繋がりがあるのです。

キャラメルの香り

欅平の紅葉は
0keyaki.jpg
(昨日の祖母谷堰堤)
今のところ、まだ50から70パーセントくらいの色づきでしょうか。
観光ポスターで見るような鮮やかな紅葉を求めて来られた方々にとっては、まだちょっと残念な色合いではありますが、進んできてはいるのです。少しずつ。
明日あたりから朝の最低気温もグッと下がる予報なので、一気に進むかもしれません。

秋の気配を感じるのは、なにも視覚だけではありません。
嗅覚で感じる秋もあります。
カメムシの匂いかっ。と思い出されるかたもいるかもしれませんね。

トロッコの途中駅「笹平」でほのかに香ってきたのはキャラメルのような香りです。

1katsura.jpg
カツラの落ち葉です。
独特の「砂糖を焦がしたような匂い」が漂ってきます。

3katsura.jpg
葉は丸っこいハート型。
嗅覚の敏感な方は葉が緑のうちから「匂う」といわれますが
秋の落葉のころに一際感じられます。

2katsura.jpg
欅平ではカツラの木はあまりありませんが、黒薙駅から鐘釣駅沿線で川岸などに見つけられます。

皆さんもそれぞれの「秋の香り」を見つけてください。

真木の葉

台風もいくつか過ぎて季節はすっかり秋。
1kiri.jpg
ある日の雨上がりの光景です。
「霧立ちのぼる 秋の夕暮」ですか。

上の句はなんだっけ、と調べました。
「村雨の 露もまた干ぬ 真木の葉に」でした。
百人一首の中にもある寂蓮法師の詠んだ歌です。

この「真木」とは植物のマキ(槇)のことを指す場合もありますが、
多くの場合、広い意味でスギやヒノキ、マツなどの常緑樹の事を指します。

欅平周辺で観察できる常緑針葉樹は

まずは黒部峡谷を代表する ツガ
2tsuga.jpg
北アルプス周辺ではよく似たコメツガのほうが多く見られます。
しかし、ここ黒部峡谷では本来暖地に生育するツガが群落を形成することが大きな特徴となっています。
詳しくは→当館HP「黒部峡谷の地形」にて

3tsuga.jpg
コメツガと見分けるポイントは若い枝に毛がはえていないことと、球果(まつぼっくり)が枝に対して直角ぎみにつくところです。
ちょうど今年は奥鐘橋のたもとにたくさんの球果をつけた大木がありますので観察してみてください。

それから ネズコ
5nezuko.jpg
ヒノキの仲間で、別名はクロベ。
他のヒノキに比べて、材の色の赤みが強いことから黒檜(くろひのき)とも呼ばれます。

6nezuko.jpg
小さなうろこ状のひとつひとつが葉です。
サワラやアスナロに似ていますが、葉の裏面の気孔帯(白っぽい模様)が、サワラなどでは、はっきりした粉白色なのに対し、やや黄緑色ではっきりしないところがポイントです。

そしておなじみの スギ
4sugi.jpg
5sugi.jpg
富山県東部の山地に多く見られるタテヤマスギ(立山杉)と呼ばれる地域品種と思われます。
トロッコの鐘釣駅より下流の沿線では植林されたらしき杉林も見られますが、欅平あたりでは、土壌のたくさん溜まるような平らな場所があまり無いせいか、まとまって生えている場所は見つかりません。猿飛遊歩道の途中、河原園地近くに2本の大木がありますが、自然に生えたものなのでしょうか。ナゾです。

あとは、近くではなかなか見つけられませんがマツもあります。
(たぶん キタゴヨウ)
7kitagoyou.jpg

いずれも古くから建材などに利用され、ヒトの生活にかかせないものでした。
そしてこれからの季節、紅葉が進むと、赤や黄色に色づく落葉樹に混じる濃緑色のアクセントとして、黒部峡谷を彩ります。

まだ今は緑一色の山ですが、実は多種多様な樹木があるということも、ぜひ観察してみてください。

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